なぜガラパゴス諸島の動物を触ってはいけないのか?

ガラパゴス諸島に関わる仕事をしている者として、多くの日本の方々がガラパゴス諸島を訪れ、その美しさに触れ、素晴らしい体験をしていただくことは非常に嬉しいことです。

ガラパゴス諸島には、生態系保護のために様々なルールが設けられており、その中の主要な一つに「動物に触れてはいけない」という規則があります。

しかし、残念ながら観光客がガラパゴス諸島の動物に触れている動画をSNS上で見かけることがあります。

ガラパゴス諸島の歴史やそこに生息する動植物について知ることで、いかに国立公園のルールを守ることが大切かが理解できます。

この記事では、なぜガラパゴスの動物に触ってはいけないのかを詳しく説明します。

 

自然と人間の共生を目指すガラパゴス諸島

ガラパゴス諸島は間違いなく世界で最も素晴らしい場所の一つです。

訪れる人は皆、美しいターコイズブルーの海、人々の温かさ、ここでしか見られない動物や植物に魅了されます。

また、その特異な自然環境と豊かな生物多様性から、地球上で最もユニークな場所とされています。


(日向ぼっこをするウミイグアナ)

 

しかし、ガラパゴス諸島が現在の形になるまでには多くの困難がありました。

19世紀から20世紀初頭にかけて、ガラパゴス諸島は捕鯨船や海賊船などの中継地点として利用されていました。

海賊たちや船員たちは、貨物や食料とともに外来種を持ち込み、それによって島々の独自の生態系が破壊される原因となりました。

また、ゾウガメなどは食料として乱獲され、いくつかの種は絶滅し、島の生態系に深刻な影響を及ぼしました。


(2012年に絶滅してしまったピンタ島ゾウガメのロンサムジョージのはく製)

 

1960年代にエクアドル政府がガラパゴス諸島の保護に乗り出し、1978年には諸島がユネスコの世界遺産に登録され、自然環境の保護活動が強化されました。

さらに1990年代にはエコツーリズムや研究のための保護区域が設定され、現在にわたってガラパゴス諸島の独自の生態系を守るべく、厳格な環境保護と管理が行われています。

破壊された自然の再生プロジェクトや生態系の維持のための研究など、多くの人々の絶え間ない努力が今も続いているのです。


(サウス・プラザ島ではウチワサボテンの再生プロジェクトが行われている)

 

観光業もガラパゴスの経済にとって非常に重要ですが、一方で観光客の増加は生態系に影響を与える可能性があります。

2024年8月から入島料が大幅に値上げされましたが、その目的の一つは訪問者の数を管理し、持続可能な観光を促進することです。

人間の影響は依然として大きな脅威ですが、ガラパゴス諸島は自然と人間が複雑なバランスの中で共存することを模索し続けている場所なのです。

 

野生生物に触ってしまうとどうなるのか?

ガラパゴス諸島に滞在していると、街中でアシカを見かけることがあるでしょう。

道端で眠っている姿はとてもかわいらしく、少し触れても大丈夫だと思ってしまうかもしれません。

好奇心旺盛なアシカが自ら人間に近寄ってくることもあるかもしれません。


(プエルトアヨラの街中にはいたるところにアシカが寝ています。)

 

しかし、ほんの少し触れるだけで、人間の匂いや細菌はアシカに伝染してしまいます。

 

母親アシカは狩りから戻ってきた際、自分の子どもを匂いで識別します。

その時に人間の匂いが少しでもついていると、母親は即座に子どもを拒絶してしまいます。

授乳期の小さなアシカは、母親の手助けなくして生きることができません。

母親に拒絶されてしまうと自分の身を守ることができず、そのまま死んでしまいます。

 

また、多くのアシカはコロニーで暮らしています。

コロニーごとにフェロモンが異なるため、人間の匂いがついたアシカが戻ってきても、他の仲間から拒絶され、コロニーから追い出されてしまいます。

たとえ戻れたとしても、人間が持っていた見えない細菌がコロニーに広がり、すべてのアシカが危険にさらされることもあります。

この危険性は、アシカだけでなく他の動物にも当てはまります。

植物や土や砂なども同様に、異なる島のものを別の島に持ち込むことで、生態系に影響を及ぼすことがあります。

「少しくらい触っても大丈夫」「ほかの人もやっている」といった気持ちが、動物や島の生態系に大きな影響を与えてしまう可能性があるのです。

 

餌を与えるとどうなるか?

当たり前のことですが、ガラパゴス諸島の野生動物に餌を与えることも禁止されています。

訪問した場所に可能な限り人間の痕跡を残さないようにするため、無人島などのビジターサイトでの飲食は禁止されています。(※水は大丈夫です。)

日本で野良犬や野良猫に餌をあげる感覚で、ガラパゴス諸島の動物にも餌をあげたくなるかもしれません。

しかし、彼らは人間の食べ物に慣れていないだけでなく、定期的に餌を与えられることで自分で餌を取る本能を失う可能性があります。

餌を与えてしまうことによって、動物世界の自然で完璧なバランスが崩れることになります。


(アカアシカツオドリ。ガラパゴス諸島の動物は人間を怖がりません。)

 

たとえ一度でも、一人でも、その無責任な行為が動物たちの行動や健康に深刻な悪影響を与える可能性があることを十分に理解しておく必要があります。

 

ガラパゴス諸島を守る一員として

規則を破る人はごく一部で、ガラパゴス諸島を訪れる多くの観光客は自然に敬意を払い、国立公園のルールを順守しています。それゆえ、一部の規則違反が目立ってしまうこともあります。

ルール違反自体が問題なのではなく、その背景にある理由やルールの意義を理解し、その重要性を学ぶことが非常に大切です。

 

私たちガラカミーノスも、ガラパゴス諸島で活動する旅行代理店として、規則を遵守し島の環境を守る責任があります。そして、ガラパゴスを訪れるすべての人や島の住民一人一人が、ガラパゴス諸島の環境保護の重要性について世界に示し続ける必要があります。

未来の世代にガラパゴス諸島の美しい自然をつなげるためには、訪れた私たちもその一部であるとの意識を持ち、保護活動に参加しているという自覚を忘れないでほしいと思います。


(遠い国からのゴミもガラパゴス諸島には流れ着いています。)

環境問題はガラパゴス諸島内だけでなく、世界全体の課題ですが、何かを始めるのに遅すぎることはありません。

自然を守る一員として、ガラパゴス諸島の美しい自然とその生態系をぜひご自身の目で確かめてみてください。

皆さまのご訪問を心よりお待ちしております!

 

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