聖週間の伝統的なエクアドル料理、ファネスカ
ファネスカとは年に一度キリスト教の復活祭の頃に食べられる伝統的なエクアドルの料理です。
聖週間(セマナ・サンタ)が近い3月頃になるとキト市内のレストランなどでも販売され、その材料であるタラの干物がスーパーに並び始めるのが風物詩。
家庭や店によって若干味や材料の違いはありますが、カボチャなどをベースに12種類の穀物やタラの干物などが入ったクリームシチューのような料理です。
穀物を多く使っているため、少しだけでもしっかりお腹がいっぱいになり、味わい深くとても美味しい料理です。
ファネスカの起源は?
諸説ありますが、ファネスカの起源はスペイン植民地以前の時代にまで遡ります。
エクアドルに暮らしていた先住民たちは収穫と若い穀物の誕生を祝い、春分の日に収穫した植物とアンデスカボチャを加えたスープを食べていました。また、これには禁欲と断食に備えて食べるという意味もあったそうです。
その後、スペイン人の植民地となり、福音宣教が始まったことで先住民族と宗教的伝統が融合し、スペイン人たちは乳製品や揚げ物、タラなど他の要素を料理に取り入れ、カトリックの象徴や信仰が合わさってできたのがファネスカと言われています。
ファネスカは与えられた食べ物と祝福に対して神に感謝する意味がある宗教色の強い伝統的な料理なのです。
材料の意味
ファネスカはそれぞれの材料に、カトリックの宗教的意味が付けられています。
トウモロコシ:聖ペテロ。トウモロコシの粒は彼に多くの子孫がいたことを表し、トウモロコシの毛は彼の髭を表していると言われています。
チョチョス:イエスを裏切った弟子、イスカリオテのユダを表します。したがって、チョチョスをファネスカに入れるためには、川の水で7日間浄化する必要があります。毎日の掃除は大罪を表しているそうです。
エンドウ豆:聖アントニオの自然と農作業に対する彼の愛を表しています。サンフランシスコの修道院にある文書によると、先住民たちはこれらの穀物それぞれを「体に栄養を与え、魂に平安をもたらす緑の真珠」と考えていたそうです。
ソラマメ:磔刑中および磔刑後に聖母マリアに同行したイエスの弟子、マグダラのマリアを表しています。
かぼちゃ:豊富な食べ物とその色と質感の堂々とした存在感から、王国と財産を捨てて神に従い貧しい人々に奉仕したアッシジの聖フランシスコを象徴しています。
3種の豆:星に導かれて金、没薬、香をベツレヘムにもたらした3賢者を表しています。
タラ:香りとともに広がり、分かち合い、生きるという感覚をも意味する要素としてイエスを象徴しています。
タマネギ: 聖母マリアの三つ編みを表します。一口食べると、ファネスカを作る人たちは涙を流し、それは十字架の道でイエスに同行した女性たちが流した涙を思い出させます。
ミルクとその派生品:すべての中で最もバランスのとれた聖人である聖アウグスティヌスを象徴し、人間関係を浄化し、何よりも味と香りを調和させます。
芳香のあるハーブ: コリアンダーとオレガノはペルーの聖人サン・マルティン・デ・ポレスを表しています。この医師はハーブと根の水、絆創膏と軟膏で病気を治しました。
フリッター: 最後に追加され、聖週間の月曜日から金曜日の間に到着する家族や他の訪問者の義理の人々を表しています。
セマナ・サンタに欠かせないファネスカ
一つ一つの材料に意味付けがされているというのは、日本のお節にも通ずるところがあります。
与えられた命や大地の恵みに感謝し、家族と喜びを分かち合うということは国や宗教を越えるのかもしれませんね。
また、ファネスカを作るのには沢山の穀物の皮を剥くため大変な手間と時間がかかります。昔も今も人々はその大変な工程の中で自然や神に感謝と祈りを捧げているのです。
この時期しか食べられないエクアドルの伝統料理ファネスカ、ぜひお試しください!